2016年8月24日水曜日

旅行者の展覧会

◎展覧会情報

1年前の9月に美術家の冨井大裕さんを訪ねて行ったニューヨークでつくった作品を含む1日限りの展覧会「旅行者の展覧会」(「壁ぎわ」企画)が記録写真と出品者がそれぞれ書いたテキストの形でアップされました。

このときにつくった作品が今年の5-6月にMA2ギャラリーで発表した作品(「絵の旅」展)の契機となって、そして、いまLOKOギャラリーで開催中の展覧会「ダンダンダン。タンタンタン。」の作品へと繋がっています。この流れをみることで、作品が生成される過程を辿ることができるのではないかと思います。

印刷物のデザインは川村格夫さんです。



旅行者の展覧会
会期:2015年 9月28日(月)19:00-22:00

主催:KABEGIWA

会場:KABEGIWA(263 Wyckoff Ave 2L, Brooklyn, NY 11237 USA)


出品:近藤恵介、木村彩子、冨井大裕

印刷物デザイン:川村格夫(ten pieces

untitled 2015
ペン、紙片、石、木材
近藤恵介 


「旅行者として絵を描いたときのことを忘れないためにメモのように書いてみる」近藤恵介 

旅行者の格好、旅行者の身振り、旅行者の描く絵。
2週間の旅行に、パソコンは持って行かなかった。ノートと筆記具は持って行った。Macが日々の生活や考えを組み立てるときに果たす役割は小さくない、と いうより随分それに規定されている。まずはそれを手放す。だから、この文章も同じように旅行に持って行った筆記具で書いている。普段キーボードを叩く感覚 で書き進めると、字がもつれる。字が下手なことに少しがっかりする。それでも書き進める。そういえば、署名やメモ以上のまとまった文章をシャーペンを握り ながら書くのはいつぶりだろうか。スピード感が違うから、内容の加速度も密度も自然とそれに呼応する。シャーペンの考え方になる。まあ、急ぐ必要はまった くないからいいのだが。

場所。家では書けなかった、書き出すこともできなかったこの文章が、近所のハンバーガー屋に来てみると無理なく書けている。何でもかんでもーーー旅行のこともーーーアトリエに持ち込めばいいという訳ではない。
作品をつくるために旅行をしたのではないし、展覧会のためでもない。観光旅行。行くことそのものが目的。
旅先ですごくいい絵をみた。当たり前だが、そこに行かないとみれない展覧会やライブに足を運んだ。もちろん美味しい食事も。そういうことをアトリエに引き取らないで、そのまま生成の過程にする。 なぜだか、どんどん字が大きくなっている!

滞在先の寝室。マットレス、トランク、ゴミ箱、手書きのウェルカムボードと買った本が数冊あるくらいの天井高のある自然光がよく回る部屋。自分の手元にあ るのは、シャーペン、蛍光ペン、ボールペン、エンピツ、3冊のノートとメモ帳。これに、マーカー2本と木材1本と接着剤を買ってきて加える。携帯で撮った 写真をキンコーズで1枚だけプリントアウトもした。

風が吹いて、手に持っていた立ち寄ったギャラリーでもらった展覧会の内容が説明されたペーパーが飛ばされた。メキシコ人(?)がやっている小さな店で買ったブリトーの包み紙を落としたら、少し転がって道の出っ張りに引っ掛かった。
(そういう作品を作れるかもしれない!)

引いた線や色が飛ばされて引っ掛かるような絵の描き方を。たまには能動的にキャッチする。石を拾いに行ったりもした。そうしてできた作品を寝室の壁に引っ掛けてから、その翌日に飛行機に乗って帰国した。
あのときの感覚がようやく掴めてきた。立ち上がってきた。

2015年12月8日