2019年2月16日土曜日

、譚 近藤恵介・古川日出男

◎展覧会情報

小説家・古川日出男さんとの2年半ぶり4回目の展覧会です。
回顧展的な内容を土台にして、その上にぼく(たち)の新作、古川さん作・演出の「画廊劇」が乗ります。そして、やはり、オープニングには公開制作も行います。
展覧会に向けての短いテキストも書いたので、下に。



展覧会詳細:

「、譚 近藤恵介・古川日出男」(読み:てんたん)
2019年3月22日(金)- 4月21日(日)
LOKOギャラリー(代官山)
[公開制作]
3月23日(土)午後より
[オープニングレセプション]
3月23日(土)18:00 ‒
*3月30日(土)と4月21日(日)に画廊劇「焚書都市譚」を開催いたします。詳細情報は下記をご確認ください。

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古川さんとの4度目の展覧会はーー

愚直な合作を2011年に始めてから、画面を挟んでの対話を繰り返してきた。少しずつ方法も見出してきたし、お互いの共通言語もできたように思う。そのひとつの集大成が2016年にLOKOギャラリーで開催した展覧会「ダンダンダン。タンタンタン。」だろう。ダンダンダン!と絵と文字を積み上げた。絵が屋根、壁、床で、それを文字が柱となって支えることで、あの大きな建物のような作品は建った。お互いの絵と小説を背景に据えながら、これまでの方法論を最大化して基礎とした作品であり、あの真新しい天井高のあるギャラリー空間を覆った。日光がよく入る展示室にタンタンタンと足音が響いた。
今度はどうだろう。振り返ると、これまでにつくってきた沢山の作品がある。「振り返る」というと人生がリニアであるように思えるが、まさにそのような作品をつくってきたともいえる。というのも、最初に古川さんと2人で共作をしたのが雑誌の誌面上で、それはページを繰りながらみる/読むことが前提としてあったし、そのことを強く意識して天平時代の絵巻物《絵因果経》の形式を引用した。ただ、簡単に一直線に読めないように、視線がつまずくような段差の多いデコボコした誌面ではあったがーー。
そのことが出発点としてあるので、それからこっち、知らぬうちに直線的に歩んできたのではないか。そういえば、冒頭に書いた「ダンダンダン。タンタンタン。」展のときだって、直線的に作品を積み上げた。部分であるそれぞれの絵も直線が多用されていることに今になって気がつく。線を引くような数年間。
去年の12月1日に古川さんの舞台上でのパフォーマンスをみた。前半の自著の朗読にぼくは相当に揺れた、いや、文字が揺れていた。
朗読は、ガラスの大皿で本を下敷きにした状態で始まった。その後、皿に水が注がれた。水とガラスを通して文字は読まれ、声となって耳に届いた。安定しない本に乗る皿は揺れ、それに連動して水面は波打ち、文字は揺れた。声はーー当然揺れたし、読み間違うので途切れた。自分の書いた文字列を湾曲させ、揺らし、それを読み、声に出すことで、空間を揺るがした。繰り返しになるが、ぼくも揺れて、ひっくり返ったーー比喩でなく。しばらく後に、万年筆のインクが数滴垂らされて、水と空間がきれいな淡いブルーに染まる。

ーーそういうものになる。

2019.1.23 近藤恵介