2020年4月17日金曜日

『ことばと』創刊号

◎雑誌装画・挿絵

『ことばと』vol.1(書肆侃侃房)の装画・挿絵を描きました。佐々木敦さんが編集長を務める文学ムックの創刊号です。
表紙は机です。本文中の絵はそれぞれ、阿部和重さん、佐川恭一さん、千葉雅也さん、保坂和志さん、マーサ・ナカムラさんの文章から方法を見つけて、描きました。だから、一見バラバラ。
デザインは戸塚泰雄(nu)さん。本の潔い内容がそのまま装幀になっています。

5月末までは出版社のweb storeで送料無料で購入できるようです↓

2020年4月16日木曜日

絵と文——「卓上の絵画」のための資料

◎印刷物

*新型コロナウィルスの影響を受けて、最終週を残し「卓上の絵画(三度目の春)」展は中止となりました。


今回の展覧会では「絵と文——「卓上の絵画」のための資料」という印刷物を作品として展示、配布していました。この紙片は「卓上の絵画」に関する展覧会などの情報、これまでに書いてきた「卓上~」に関する文章、野口玲一さん(三菱一号館美術館)に書き下ろしていただいた論考、そして新作の絵で構成されています。

デザインは、2017年に「卓上の絵画」を始めるときにつくったリーフレットに引き続き戸塚泰雄さん(nu)にお願いしました。リーフレット同様、今回も折り線が入っていて、折る行為を促します。制作のプロセスとしては、まず最初に戸塚さんが原稿のレイアウトを決め、それに指示(規定)されてぼくが色面を塗り分けました。なので戸塚さんとの共作です。紙の厚みも、重さも、手触りも含めて、素晴らしいです。

野口玲一さんによる論考は、「卓上~」の前のプロジェクトである「12ヶ月のための絵画」の一隅での試みからの流れが掬い上げられています。最初に「12ヶ月」があり、「卓上」へ展開し、その流れのなかで見出した作品のあり方への可能性が提示されていて、そのまま次の制作に繋がりそうです。
そして、ぼくが今回「三度目の春」展のために書いたテキスト「ブレズレユレ」とも呼応しています。





2020年4月15日水曜日

中止になったトークイベントについて

3月28日に予定していたトークイベント「あっけない絵画、だったのか?—作品の被災から「卓上の絵画」を考える」は新型コロナウィルスの影響で中止となりました。ギャラリーとも話し合いを重ねましたが、今回ばかりは仕方ないように思います。

昨年10月の台風19号による大雨で収蔵庫が水没した川崎市市民ミュージアムには、2013年の冨井大裕さんとの2人展に出品した作品がほとんどまるごと(1点を除いて)所蔵されています。近藤の絵画が3点、冨井さんとの共作が4点、それらの作品が水没しました。1点はそれほど濡れなかったようですが、その他は応急処置が終わったところ、とのこと。まだ作品の様子は見れていないのですが、そもそも支持体が紙だし、共作の方は紙の脆弱さをそのまま露呈させるような構造を持っていて、それなりの状態にはなっているはずです。(絵具、残っているかな?)

ただ自作に限っていえば、汚損、破損それ自体はそれほど気になっていなくて、生きている作家なので、再制作でも、修復でも何でも可能で。さらにいえば、ぼくの作品はその「弱さ」こそが制作の根本にあって、紙を裏打ちして、仮張りにかけて伸ばし、彩色し、その間も濡れて乾いてを繰り返し、その後の装潢やパネルへの張り込みなど、常に状態を変えることそのものがテーマでもある。なので、自然にシミができたり、ときには破れたりすることは、時間が加筆したことで、むしろポジティブに受け止めています——自作に限っては。

で、そのことはそのまま「卓上の絵画」のテーマとも重なるので、水没からこの展覧会の会場で考えられることは沢山あったはずです。作品の被災がテーマのトークがこんな形で中止になるのは、何らかの因果を考えてもみたくなりますが……そんなにシリアスに考えても仕方ないし。

市民ミュージアムの佐藤さんとは、近代の「日本画」のあり方——それも素描を踏まえた制作の過程を、解釈しなおし、そのことから新しい絵画の方法を提案し(その一端は会場での配布資料の「ブレズレユレ」に書きました)、安田靫彦(市民ミュージアムには靫彦のコレクションが多くあって、作品の状態が気になる……)の素描などを踏まえてお話しするのを楽しみにしていました。
井さんには、「卓上〜」の企画段階からいろいろと相談しながらプランを固め、そして春展には参加してもらい、トークもして、そしてようやく今回のひとまず着地した展覧会場でお話しできる!と思っていたので、最後の重要なピースが失われたような気がしています、

あー、残念……という感じですが、このトークはまた改めて設定し直そうと思います。そのときにはぜひお越しください。

*写真は2013年の市民ミュージアムでの展覧会「あっけない絵画、明快な彫刻<再展示>」の様子(撮影:柳場大)