2019年5月22日水曜日

佐賀の近代日本画

◎展覧会情報

佐賀大学美術館で5/1からはじまった展覧会「佐賀の近代日本画」に4点の作品を出品しています。「voca2019」上野の森美術館、「、譚」LOKOギャラリー、「卓上の絵画」MA2ギャラリー、のために描いたここ最近のポイントとなる作品をまとめて見せています。
佐賀における近代以降の「日本画」の流れを整理する趣旨の展覧会ですが、幕末、明治期の文人画の紹介に始まり、佐賀出身で中央で活躍した日本画家などを経由して(立石春美の《早乙女》が素晴らしい!)、後半は佐賀大学の歴代教員の作品が並ぶのですが、その展示空間を抜けた最後のスペースはスタジオとして会期中日本画専攻生に解放しています。天井も高く、採光もいいので、とても気持ちいいです。ぼくもしばらくここで制作します。

またイベントとして、ワークショップには冨井大裕さんを招いて2010年より継続的に続けている「彫刻と絵画をめぐるワークショップ」(5/26)、ぼく個人で「他者の絵を模写する」。トークイベントでは三瀬夏之介さんとお話します(6/2)。その他にもイベントが多数予定されています。


佐賀の近代日本画
会期|2019年5月1日(水)~6月23日(日)  
会場|佐賀大学美術館 ギャラリー1、ギャラリー2、スタジオ、特別展示室
主催|佐賀大学美術館

「、譚」展の会場での公開制作

◎公開制作

小説家・古川日出男さんとの2人展のオープニングの前に公開制作を行いました。ぼくの視点からの簡単なレポートを。

濡れると見えなくなるほど薄い紙を貼り重ねて、文字の集積のみで絵画を制作しました。古川さんによって複数種類のペンで書かれた文字(今売り号の『すばる』掲載の小説「焚書都市譚」をライブで圧縮編集してリライトしたもの)を受け取り、裏に糊をぬり、貼り込むことを90分間続けました。
半透明でトロトロのデンプン糊のみをメディウムに、その糊の塗られた薄い紙は透けて文字だけが浮き上がり、支持体の上に透明のレイヤーを積層させました。糊と水分の重みで支持体が表面を保てず破れる手前で作業を終えました。乾燥とともに紙が乾いたテクスチャーを取り戻すと、ドロンと波打った紙はピンと伸びて、軽くなり、絵画としての平面性を獲得しました。




公開制作
3月23日(土)16:30 -
LOKO Gallery(代官山)





voca展 2019

◎展覧会情報

「VOCA展 2019」に新作を出品しました。
図録収録の神山亮子さんのテキストが明快にこの作品のことを解説していますので、実物とあわせてぜひ。書き出しの「近藤恵介の絵の前後左右上下が大事である。」が素晴らしいです。
柳沢秀行さんのテキストでは、この作品における、大画面絵画に対する代替可能性が示唆されていて、意外とその部分には意識的ではなかったので、なるほどなぁ、と。
作品は順路の一番最後にあるのですが、居心地のいい場所が他になかったのか、オチなのか、もしくは未来へのオープンエンディングなのか。



VOCA展 2019
20192019年3月14日(木) - 30(土)
上野の森美術館(東京)


2019年3月6日水曜日

水脈

◎展覧会情報

3/1より恵比寿のMA2ギャラリーではじまった展覧会に、小説家・古川日出男さんとの合作を中心に4点(過去作)を出品しています。


水脈/Water Venis
赤木明登 / 木下晋 / 具体派 / 袴田京太朗 / 今井俊満 / 近藤恵介・古川日出男
2019年3月1日(金) - 23日(土)
MA2 ギャラリー(恵比寿)
http://www.ma2gallery.com

「、譚 近藤恵介・古川日出男」展 DM

◎展覧会情報

「、譚」展のDMができました。

デザインは戸塚泰雄さん(nu)です。戸塚さんには過去3回の「近藤・古川」展の印刷物もお願いしているのですが、その経緯もしっかりと織り込まれたものになりました。
ぜひ、手にとってみてください。入稿前にさんざんデータでみていても、手にして初めてわかることがたくさんあります。
「まさに「、」しまくり」(古川さん談)です!



2019年3月3日日曜日

「、譚」予告映像

◎展覧会情報

3/22(金)より、代官山のLOKOギャラリーで開催の「、譚(てんたん) 近藤恵介・古川日出男」展の予告映像を、映像作家の河合宏樹さんがつくってくれました。
2012年(代官山蔦屋書店)、2016年(LOKOギャラリー)の公開制作の様子が、切り貼りして併置されています。しかし、いつもこうやってせかせかと絵を描いているんだな。
河合さんは「画廊劇・焚書都市譚」にも出演します。


2019年2月16日土曜日

、譚 近藤恵介・古川日出男

◎展覧会情報

小説家・古川日出男さんとの2年半ぶり4回目の展覧会です。
回顧展的な内容を土台にして、その上にぼく(たち)の新作、古川さん作・演出の「画廊劇」が乗ります。そして、やはり、オープニングには公開制作も行います。
展覧会に向けての短いテキストも書いたので、下に。



展覧会詳細:

「、譚 近藤恵介・古川日出男」(読み:てんたん)
2019年3月22日(金)- 4月21日(日)
LOKOギャラリー(代官山)
[公開制作]
3月23日(土)午後より
[オープニングレセプション]
3月23日(土)18:00 ‒
*3月30日(土)と4月21日(日)に画廊劇「焚書都市譚」を開催いたします。詳細情報は下記をご確認ください。

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古川さんとの4度目の展覧会はーー

愚直な合作を2011年に始めてから、画面を挟んでの対話を繰り返してきた。少しずつ方法も見出してきたし、お互いの共通言語もできたように思う。そのひとつの集大成が2016年にLOKOギャラリーで開催した展覧会「ダンダンダン。タンタンタン。」だろう。ダンダンダン!と絵と文字を積み上げた。絵が屋根、壁、床で、それを文字が柱となって支えることで、あの大きな建物のような作品は建った。お互いの絵と小説を背景に据えながら、これまでの方法論を最大化して基礎とした作品であり、あの真新しい天井高のあるギャラリー空間を覆った。日光がよく入る展示室にタンタンタンと足音が響いた。
今度はどうだろう。振り返ると、これまでにつくってきた沢山の作品がある。「振り返る」というと人生がリニアであるように思えるが、まさにそのような作品をつくってきたともいえる。というのも、最初に古川さんと2人で共作をしたのが雑誌の誌面上で、それはページを繰りながらみる/読むことが前提としてあったし、そのことを強く意識して天平時代の絵巻物《絵因果経》の形式を引用した。ただ、簡単に一直線に読めないように、視線がつまずくような段差の多いデコボコした誌面ではあったがーー。
そのことが出発点としてあるので、それからこっち、知らぬうちに直線的に歩んできたのではないか。そういえば、冒頭に書いた「ダンダンダン。タンタンタン。」展のときだって、直線的に作品を積み上げた。部分であるそれぞれの絵も直線が多用されていることに今になって気がつく。線を引くような数年間。
去年の12月1日に古川さんの舞台上でのパフォーマンスをみた。前半の自著の朗読にぼくは相当に揺れた、いや、文字が揺れていた。
朗読は、ガラスの大皿で本を下敷きにした状態で始まった。その後、皿に水が注がれた。水とガラスを通して文字は読まれ、声となって耳に届いた。安定しない本に乗る皿は揺れ、それに連動して水面は波打ち、文字は揺れた。声はーー当然揺れたし、読み間違うので途切れた。自分の書いた文字列を湾曲させ、揺らし、それを読み、声に出すことで、空間を揺るがした。繰り返しになるが、ぼくも揺れて、ひっくり返ったーー比喩でなく。しばらく後に、万年筆のインクが数滴垂らされて、水と空間がきれいな淡いブルーに染まる。

ーーそういうものになる。

2019.1.23 近藤恵介