2014年2月2日日曜日

トークイベント「12ヶ月/絵画/Alterspace」の様子



1月24日(金)に開催されたアサヒ・アートスクエアでのトークイベント「12ヶ月/絵画/Alterspace」の様子です。リラックスした雰囲気で、充実の内容でした。モデレーターの水田紗弥子さんが概要をまとめてくださっています。

以下、テキストは水田さんによるものです↓

昨日、近藤恵介さんの「12ヶ月のための絵画」にまつわるトークイベントを開催しました。(トーク続きだったので、昨日はゲストの方も近藤さんのこともよく知っていたから安心してリラックスしてのぞみましたー。楽しかった。)

近藤さんが2013年9月から始めた毎月新作を発表し、近藤さんにまつわるテキストも掲出されるというガチで自分が試される(見る方も大変)脅威の企画です。アスリート的瞬発力で毎月様々な課題に取り組むということと、作家がいかに自分の作品をコンスタントに制作し、そして人に見せる環境を積極的に持つかという試みで、わたしはAlterspaceのプロジェクトのなかで紹介したいと思い出展をお願いしました。


前半は川崎市市民ミュージアムの佐藤美子さんをお招きしました。日本画の研究者の方の視点から、近藤さんのポップな色が多用された日本画らしくない絵画にも関わらず、歴史的な日本画の型を踏まえているという話をしてくださいました。私と近藤さんは生徒、佐藤さんが先生で教えてもらうスタイルです。
おもしろかったのは安田靫彦が引きこもりがちで病弱であったことから、作家の健康/体力と制作姿勢がいかに結びついているかを考えるというくだりでした。安田靫彦が絵因果経という絵巻物の模写をしたというところから話がつながると思っていたのですが・・・。特に、ミレーの落ち穂拾いを参照して描いたという作品を最後まで発表し なかったという頑固さと痛さにかなりぐっと来ました。全然勉強したことが無かったので本当におもしろかった。安田靫彦にはこれからハマろうと思います。あと、ところどころ無知を晒してしまい恥ずかしかったです・・・しょうがないけど。。。
ちなみに近藤さんの作品に昨年あたりから登場した、書き割りのような巨大な色面は、日本画でいうところの霞や
土坡のような形式的に画面を構築するためのモチーフと繋がるそうです。

後半は私の疑問から発した展覧会と作家との関係について、冨井大裕さん、丹羽良徳さんをお招きし話を伺いました。冨井さんの「壁ぎわ」の活動と世話人と称するその立ち位置、伝説化のためのチラシ制作も笑えましたが、作家にとっての発表のあり方が大上段に構えた場でなく、作家視点から作家をフットワーク軽く紹介するという、作家とキュレーターの距離の違いによって生まれる差異がおもしろかったです。でももしかしたら、その距離の詰め方は、やりようによっては侵犯することができるかもしれません。特にAlterspaceにも参加している大槻英世さんが壁ぎわで紹介されたマスキングをキーワードにした展覧会は、キュレーター視点だとちょっとできないようなーと思ったのですが、そういう発想での文脈づけもアリかも。今回大槻さんが床置きペインティングをやったので、壁ぎわで「床おき」という展覧会にも発展するかもしれません。

丹羽さんの話は、作家活動を始めた当初は公共空間が制作と発表のメインステージで、展覧会のオーガナイズも行っていたという時代を経て、今では公共空間でのパフォームやアクションを発表する場が美術館やギャラリーに変更したというだけ、という作家ならではの視点。さまざまな自己プロデュースによる展覧会づくりをさっぱりやめた丹羽さんから展覧会制度批判的なものが出てくるのかなーって思っていたけど、意外にも必然的にフェードアウトという、やっぱり直接聞かなきゃわからないというのがおもしろかった。
ちなみに冨井さん、丹羽さんお二人とも近藤さんについてのテキストを書かれていて、そこにも二人の立ち位置が表れています。しかしかなり共通点があり、そこが驚きと発見でした。
特に丹羽さんのテキスト(近藤さんの12ヶ月のための絵画の《2月》のバージョンですが、昨日フライングで配布してもらった)、疑問と仮の答え、それに対するまた疑問という、丹羽さんの作品のような不条理なことの繰り返しになっていて必読。

丹羽良徳
http://yoshinoriniwa.tumblr.com/xxx

冨井大裕
http://tomiimotohiro.com/

壁ぎわ
http://kabegiwa.com/