2013年3月31日日曜日

「板と紙とケータイ電話」展の様子



現在MA2ギャラリーで開催中の展覧会「板と紙とケータイ電話」の様子です。
今回の新作は、ここ数年試みている中世のやまと絵に見られるような絵画を成立させるための様々な「装置」を自分の絵画の中に招き入れ、自分の持っている技術と折り合いのつく形式へと変形させ画面を構築する、ということを大きなサイズへ展開させました。

やまと絵は日本独自の風俗や物語などの題材を絵画化し、それに見合った繊細な描法によって制作された絵画ですが、同一の画面内にいくつものシーンを併置する絵巻物や大画面説話絵などにおいて、無理なく自然に空間を区切ったり、画面が寂しくならないように隙間を埋めるものとして、すやり霞、金雲、土坡などが頻繁に描かれました。時代を経てそれらは様式化され、絵画を成立させるための重要なパーツとなりました。
今回の新作絵画を構成する為の装置をつくる際に参照したのが、平安・鎌倉期に成立した、有名なところでは「源氏物語絵巻」などに顕著にみられる「吹抜屋台」を中心とする建材を用いた構図法でした。画面を縦横無尽に支配する梁や柱などの木材を、僕がこれまでに描いて来た木材とリンクさせ、これまでの描法をそのまま用い、自分の画中に落とし込みました。
また、昨年の小説家・古川日出男さんとの恊働制作(「覆東方恐怖譚」展)の際には、日本絵画史を(古川さんは日本文学史を)俯瞰するような試みをしました。それまでに培ってきた技術をジャンプ台にして、画面を大きく展開するためのヒントを得る重要な機会となりました。2011年の「東方恐怖譚」展を「覆す」という意図で企画した「覆東方恐怖譚」展の「覆」という部分を西洋絵画の「オールオーヴァー」という言葉に読み換えて、絵画を観る快楽(豊穣さ)としての色面を増幅させて画面を支配しました。
そのふたつの要素を、障子の骨組みに和紙を張り込むように組み合わせ、自分の絵画内に組み込み、作品化しました。