2014年2月27日木曜日

「なnD 2」



雑誌「なnD」の2号に寄稿しました。「12ヶ月|聖家族|オースター」というタイトルで、年末年始の制作と仕事のことを書いています。

また、2号目の発売を記念して3人の編集者による「Diaries」という展示を西荻窪の雑貨屋兼ギャラリー・FALLにて開催中です。「なnD 2」の販売に加え、「なんとなく、クリティック 2」「10年メモ 2014年版」の先行発売なども。
展示の概要は以下です。

■「Diaries」展
・日時:2月26日(水)〜3月2日(日)
    12:00〜20:00
・場所:西荻窪・FALL(http://fall-gallery.com/

■「なnD 2」コンテンツ:

・近代ナリコ「二月の庭」
・田中康夫インタビュー「“33年後”その理由」
・粉川哲夫×渡部幻「映画に没入せよ!~粉川流メディア思考法~」
・毛利悠子インタビュー「優雅な野蛮」
・菱沼達也「善悪の彼岸」
・柴崎友香×三宅唱「寝ても覚めてもPlayback」
・藤井裕二「母の名」
・迫川尚子「新宿1996/2014」
・橋本優歩「最後のライターたち」
・近藤恵介「12ヶ月|聖家族|オースター」
・石島裕之「簡易スープ」
・小林英治「インスタ日記2」
・小林和人(Roundabout,OUTBOUND)×三品輝起(FALL)
・藤井裕二「弱さは力」
・土居伸彰「ひらのりょうに新作『パラダイス』の話を聞きにいく」
・森田真規「『なんとなく、クリティック 2』もう1つの編集後記」

700円(税別)
120p/B6変形
2014.2.26発行

「12ヶ月のための絵画」《2月》

◎展覧会情報


昨日2月7日(金)より「12ヶ月のための絵画」の《2月》の作品が展示されています。会場は通常どおりの恵比寿のMA2 ギャラリーです。

今月は初めて作品が立ちます!衝立(ついたて)をイメージして、両面に(側面にも)絵が描かれています。板の木目のうえには雲母、砂子、切金のようにさまざまな断片が散らばっています。この作品、更に展開できそうです。

作品と同時掲出のテキストはアーティストの丹羽良徳さんに書いていただきました。配布用はA4サイズですが、掲出のテキストはA0サイズの大判です。
丹羽くんのテキストはすべてが直線的に「進行」しています。まず疑問に思ったことを記して、その都度苦し紛れに納得する、それをさらに否定して疑問を生み出すという、ひとつの文章が次の文章を生じさせるようなスリリングな印象があります。
全体の統一や整理整頓のことを話題にしながら、テキスト自体は非常に散らかっいて、遡って読ませない一方向性があるように思います。丹羽くんのビデオ作品内で彼が歩く様子を背中越しにみるような。
更に今回の展示では掲出してある大判のテキストに「つっこむ」ように(本人が言うところの「のりつっこみ」)赤文字が書き込まれています。

「12ヶ月のための絵画」《2月》
展示期間:2月7日(金)- 28日(金)
会場:MA2 ギャラリー

「12ヶ月のための絵画」サイト 





 作品データ:
「12ヶ月のための絵画《2月》」 2014
岩絵具、水干、膠、墨、檜板
265×265×30mm

2014年2月2日日曜日

文庫版『聖家族』

書籍の話題が続きますが、3月1日(土)発売の古川日出男さんの文庫版『聖家族』(新潮文庫)の本文カットを描きました。計4点のバリエーションが、*(アスタリスク)の延長として本文中の多くの場所に散在しています。読み進めることで、少しずつ役割を深めていきます。
下巻に所収の「『聖家族』世界の家系図」には、ぼくと古川さんとのプロジェクト「東方恐怖譚」シリーズに登場したあの犬が出てきます。
装丁写真は詩人の吉増剛造さんです。凄まじいです。

単行本の上梓から5年半、あのメガノベルが文庫化です!

新潮社書籍詳細
上巻
http://www.shinchosha.co.jp/book/130534/
下巻
http://www.shinchosha.co.jp/book/130535/


『写字室の旅』

1月31日(金)発売のポール・オースターの新刊『写字室の旅』(新潮社)の装丁画を描きました。
これのために4点の新作を制作して、それを横に繋げたものが本をグルリと包んでいます。小説の内容と隣り合うような装丁になっているかと思います。ちよっとした仕掛けも仕組んでいますので、ぜひ手にとってご覧ください!全国の書店に並んでいます。
翻訳はもちろん柴田元幸さんです。

http://www.shinchosha.co.jp/book/521716/


トークイベント「12ヶ月/絵画/Alterspace」の様子



1月24日(金)に開催されたアサヒ・アートスクエアでのトークイベント「12ヶ月/絵画/Alterspace」の様子です。リラックスした雰囲気で、充実の内容でした。モデレーターの水田紗弥子さんが概要をまとめてくださっています。

以下、テキストは水田さんによるものです↓

昨日、近藤恵介さんの「12ヶ月のための絵画」にまつわるトークイベントを開催しました。(トーク続きだったので、昨日はゲストの方も近藤さんのこともよく知っていたから安心してリラックスしてのぞみましたー。楽しかった。)

近藤さんが2013年9月から始めた毎月新作を発表し、近藤さんにまつわるテキストも掲出されるというガチで自分が試される(見る方も大変)脅威の企画です。アスリート的瞬発力で毎月様々な課題に取り組むということと、作家がいかに自分の作品をコンスタントに制作し、そして人に見せる環境を積極的に持つかという試みで、わたしはAlterspaceのプロジェクトのなかで紹介したいと思い出展をお願いしました。


前半は川崎市市民ミュージアムの佐藤美子さんをお招きしました。日本画の研究者の方の視点から、近藤さんのポップな色が多用された日本画らしくない絵画にも関わらず、歴史的な日本画の型を踏まえているという話をしてくださいました。私と近藤さんは生徒、佐藤さんが先生で教えてもらうスタイルです。
おもしろかったのは安田靫彦が引きこもりがちで病弱であったことから、作家の健康/体力と制作姿勢がいかに結びついているかを考えるというくだりでした。安田靫彦が絵因果経という絵巻物の模写をしたというところから話がつながると思っていたのですが・・・。特に、ミレーの落ち穂拾いを参照して描いたという作品を最後まで発表し なかったという頑固さと痛さにかなりぐっと来ました。全然勉強したことが無かったので本当におもしろかった。安田靫彦にはこれからハマろうと思います。あと、ところどころ無知を晒してしまい恥ずかしかったです・・・しょうがないけど。。。
ちなみに近藤さんの作品に昨年あたりから登場した、書き割りのような巨大な色面は、日本画でいうところの霞や
土坡のような形式的に画面を構築するためのモチーフと繋がるそうです。

後半は私の疑問から発した展覧会と作家との関係について、冨井大裕さん、丹羽良徳さんをお招きし話を伺いました。冨井さんの「壁ぎわ」の活動と世話人と称するその立ち位置、伝説化のためのチラシ制作も笑えましたが、作家にとっての発表のあり方が大上段に構えた場でなく、作家視点から作家をフットワーク軽く紹介するという、作家とキュレーターの距離の違いによって生まれる差異がおもしろかったです。でももしかしたら、その距離の詰め方は、やりようによっては侵犯することができるかもしれません。特にAlterspaceにも参加している大槻英世さんが壁ぎわで紹介されたマスキングをキーワードにした展覧会は、キュレーター視点だとちょっとできないようなーと思ったのですが、そういう発想での文脈づけもアリかも。今回大槻さんが床置きペインティングをやったので、壁ぎわで「床おき」という展覧会にも発展するかもしれません。

丹羽さんの話は、作家活動を始めた当初は公共空間が制作と発表のメインステージで、展覧会のオーガナイズも行っていたという時代を経て、今では公共空間でのパフォームやアクションを発表する場が美術館やギャラリーに変更したというだけ、という作家ならではの視点。さまざまな自己プロデュースによる展覧会づくりをさっぱりやめた丹羽さんから展覧会制度批判的なものが出てくるのかなーって思っていたけど、意外にも必然的にフェードアウトという、やっぱり直接聞かなきゃわからないというのがおもしろかった。
ちなみに冨井さん、丹羽さんお二人とも近藤さんについてのテキストを書かれていて、そこにも二人の立ち位置が表れています。しかしかなり共通点があり、そこが驚きと発見でした。
特に丹羽さんのテキスト(近藤さんの12ヶ月のための絵画の《2月》のバージョンですが、昨日フライングで配布してもらった)、疑問と仮の答え、それに対するまた疑問という、丹羽さんの作品のような不条理なことの繰り返しになっていて必読。

丹羽良徳
http://yoshinoriniwa.tumblr.com/xxx

冨井大裕
http://tomiimotohiro.com/

壁ぎわ
http://kabegiwa.com/